#02
ホール素子とADCを組み合わせて中空エンコーダを作りたい!

旭化成エレクトロニクス (AKM) のA/Dコンバーター (以下ADC) 連載シリーズ第2話。
モーター製品を製造開発する架空のモーター企業の社員A君が、K先輩や上司のM課長とADCの知識を深めていくお話です。

今回はAKMのホール素子とADCの組み合わせによる中空型エンコーダソリューションを紹介します。

K先輩

「回転角度を検出する装置を、一般にエンコーダと呼んでいるわ」

A君

「さすがに知ってますよー。僕もモーター屋ですから」

K先輩

「早速、ホール素子とADCを使用して、12bit以上の角度分解能をもつエンコーダを作ってみよう!」

A君

「ホール素子って、モーターだと磁極検知でよく使いますけど、12bitのエンコーダなんて作れるんですか?」

K先輩

「可能よ。ADCで電気内挿すればね」

A君

「電気内挿って、つまり補間することでしたっけ?」

K先輩

「そう。ADCのbit数分、分解能を電気的に向上できると考えれば良いわ。もちろん、センサーの歪みなどにもよるけどね

A君

「へえー、ホール素子に対しても出来るんですね」

K先輩

「それにこの構成には、中空エンコーダを作るのが簡単、っていうメリットがあるの」

A君

「中空?」

K先輩

「回転軸の真ん中が空いているエンコーダ。軸貫通型エンコーダとも呼ぶわ」

A君

「軸貫通型って、最近のモータートレンドですよね」

K先輩

「軸端で検出するタイプのエンコーダだと、どうしても厚くなっちゃからね。中空にできると、内部に配線も通せるし」

A君

「なるほど。12bitの中空エンコーダってことですね」

K先輩

「さて、用意するのはドーナツ型に中心をくりぬいた2極の磁石。着磁は径方向だよ。それに、AKMの HZ-116C を2個と、AK924Xシリーズを1個よ。今回は12bitの AK9240NK で進めましょう」

A君

「部品少ないですねー。実装面積が減るのはいいなぁ」

K先輩

「初めに、2個のホール素子を、回転軸から見て0度と90度の位置に配置します。回転体にはドーナツ型磁石を取り付けて、磁石の真下にさきほどの基板を配置します。こんな感じね」(図1)

図1. 2極磁石とホール素子の配置

K先輩

「それぞれのホール素子が検出する磁束密度は、磁石の回転に応じてcosθとsinθの成分になっている。ホール素子は磁束密度に比例した電圧を出力するので、ホール素子はcosθとsinθの信号を出力するわけね。90度位相差の信号、いわゆるA相とB相の信号よ」

A君

「えーと、1回転に対して、1波のA相とB相の信号が出力されるって考えればいいんですよね?」

K先輩

「そう。1回転を1波で表すことができる。このホール素子の出力をADC AK9240NK に入力しよう!」

A君

「え、いきなりA/D変換しちゃっていいんですか?」

K先輩

「というと?」

A君

「ホール素子の出力って、かなり小さいですよね? 確か、100mVppぐらいだったような」

K先輩

「磁石の強さ、厚みや空間配置にも依存するけど、そのぐらいだね」

A君

「ADCの入力レンジって5Vぐらいですよね? 前段にアンプを置いて増幅してあげないと」

K先輩

「まさにそこが、AK924Xシリーズの利点よ! なんとADCの手前に計装アンプが搭載されているの!」

A君

「えー! こんなに小さいのに!?」

K先輩

「AK9240NK は3mm角のパッケージに2チャンネルの12bit-ADC、その前段には計装アンプ、2段階可変ローパスフィルタ、8段階のPGA (プログラマブル・ゲイン・アンプ) まで内蔵されているのよ」(図2)

図2. AK9240NK のブロック図

A君

「ゴージャス!」

K先輩

「更にこのデータシートを見て。ゲイン23dBという高い設定値においてS/N=72dBをスペック保証しているでしょ。一般的に前段アンプ内蔵ADC製品でこんな高いゲイン設定では、S/N特性をスペックしてないことが多いんだ」

A君

「ということは、何も考えずにホール素子と接続すれば、良好なノイズ特性が得られるってことですか? これなら簡単ですね!」

K先輩

「そうでしょ。納期も迫っているし時間もない中で、アナログ設計に時間を取られないのは助かるよね」

A君

「ところで、ホール素子は温度依存性が大きいと聞いたことがあるんですけど、大丈夫なんですか?」

K先輩

「原理的には、磁気感度の温度依存性が2個のホール素子で揃っているなら、角度θを算出するときにA相とB相の信号を割り算するから、温度に依存する項はキャンセルされるわ」

A君

「ふーん。……でも、2個で揃っているなんて、本当ですか?」

K先輩

「うーん、確かに。温度依存性って、揃っているのかしら?」

M課長

「そこには工夫があるのだよ」

A君

「あ、M課長。まるで図ったかのようなタイミングで登場しましたね」

M課長

「HZ-116C は製造上の工夫により、『リール内の隣り合う2個のホール素子の温度特性がほぼ揃っている』ようになっているのだ。このため、一般のホール素子よりも、温度ドリフトが小さくなる」

A君

「なるほどー」

K先輩

「だから HZ-116C と組み合わせて使うのが良いのね」

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