#05
AKMの電流センサーとA/Dコンバーターの組み合わせ方②

旭化成エレクトロニクス (AKM) のA/Dコンバーター (以下ADC) 連載シリーズ第5話。
モーター製品を製造開発する架空のモーター企業の社員A君が、K先輩や上司のM課長とADCの知識を深めていくお話です。

前回に引き続き、AKMのコアレス電流センサーとADCを組み合わせた電流検知ソリューションを紹介します。

 

A君

「電流センサーとADCのデータシートってそれぞれ別ですよね? トータル特性がどうなるか、考えるのが面倒です!」

K先輩

「今回は基本特性についてデータシートの読み方を理解しよう。電流検知で気になる項目ってどのあたり?」

A君

「まずは電流計測範囲ですかね。あと、ゼロ電流時の出力オフセット、電流感度、応答性、とか」

K先輩

「電流センサーの特性だけで決まる項目もあれば、ADCとの組み合わせや周辺回路に依存して変わる項目もあるね。推奨回路の場合にどうなるか考えよう」 (図1)

図1. CQ3303 と AK9235 回路図

K先輩

「電流計測範囲は電流センサーの仕様だけで決まるよ。『出力不飽和範囲』の仕様だね。CQ3303 の場合は±35A」 (図2)

図2. CQ3303 データシート項目抜粋

A君

「これとは別に『最大実効電流』ってのもありますね」

K先輩

「『最大実効電流』は電流センサーに定常的に流せる最大電流値。CQ3303 の場合は20Armsね。実効値なのがポイント」

K先輩

「次にゼロ電流時の出力オフセット。これは回路構成によっても変わってくるけど、推奨回路の場合、電流センサーの『零電流電圧』とADCの『Offset Error』で確認できるよ」 (図3)

図3. AK9235 データシート項目抜粋

A君

「ADCのAINNピンにVDD/2 (電源電圧の半分) を入れているから、差動で0V入力、ってことですよね。……あれ、電流センサーの仕様は2.5Vになっていますよ。VDD/2でいいんですか?」

K先輩

「この2.5Vというのは、VDD=5Vの時の値ね。AKMの電流センサーは電流感度も零電流電圧も共にレシオメトリックなので、2.5Vと書いてあっても、実際にはVDD/2が出力されるよ」

A君

「レシオメトリック??」

K先輩

「レシオメトリックとは電源電圧が変動した場合、それに比例して出力も変動する特性のことだよ」

A君

「オフセットの最大最小値は、電流センサーが±20mV、ADCが±2mVですか。ADCは無視できますね」

K先輩

「厳密には二乗和で考えてね。じゃ、以下の記述を参考にしてADCの出力コードに換算してみよう」
 Full ScaleおよびLSBサイズを次式に示します。
 Full Scale = 2×VREF
 1LSB = Full Scale / 4096 [V]

A君

「1LSBっていうのが、1codeあたりの電圧分解能ですよね。推奨回路だとVREFPピンにVDD/2を入力しているから、VDD=5Vの時に1.22mVですね。つまり±20mVは±16LSB」

K先輩

「いいね。じゃあ次は電流感度。電流センサーの『電流感度』と、ADCの『Full Scale Range』から計算できるよ」

A君

「……うーん。単位がmV/Aだったり、Vだったり、わかりにくいなぁ」

K先輩

「1Aの電流変動量がADC出力で何LSBかを計算すると良いわ」

A君

「えーと、電流感度は60mV/Aだから、1Aあたり60mVが電流センサーの出力電圧変動量になる。この60mVを1.22mV/LSBで割ると49LSB」

K先輩

「そう。電流センサーとADCのトータルでは、49LSB/Aという電流感度になるね。厳密にはADCの『Gain Error』も関わるけど、十分小さいから無視。この推奨回路だと、電源が変動しても49LSB/Aは変わらないよ」

A君

「VREFPピンにVDD/2を入力して、ADCもレシオメトリックにしているから?」

K先輩

「当たり。例えばVDD=5.5Vに変化したら電流センサーの電流感度は10%増加した66mV/Aになる。一方、ADCのFull Scale Rangeも10%増加しているので1LSBは1.34mV (=5.5/2^12) になっている。割り算すると、49LSB/Aね」

A君

「だいぶ使い方のイメージがついてきました」

K先輩

「最後に応答性。電流センサーの『周波数特性』とADCの『Full Power Bandwidth』、それに重要なのはボード上のRCフィルタ時定数ね」

A君

「電流センサーは1000kHz、ADCは25MHzです。これは低い方で考えればいいですよね。つまり1MHz」

K先輩

「RCフィルタ時定数は、電流センサーの出力とADCの入力の間にあるRCフィルタのこと。4.7Ωと1nFの場合、カットオフ周波数は33.8MHzだね」

A君

「じゃあ結局、1MHzということですね」

K先輩

「今は十分高くしているけど、電流センサーのノイズを落としたいときは、もっと帯域を絞るでしょ? カットオフ周波数が1MHzを下回ったら、このRCが応答性を制限するようになるわ」

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