#11
モーター電流検出におけるZDS-NS型ADCのメリットって?

旭化成エレクトロニクス (AKM) のA/Dコンバーター (以下ADC) 連載シリーズ第11話。
モーター製品を製造開発する架空のモーター企業の社員A君が、K先輩や上司のM課長とADCの知識を深めていくお話です。

今回は、モーター電流検出におけるZDS-NS型ADCの利点を紹介します。

 

K先輩

「前回説明した通り、シャント抵抗を使用する場合に組み合わせる絶縁型ADCって中身はΔΣ型モジュレーターだから、後段のディジタルフィルターが応答性を律速してしまうのね。それに対して、AKMの電流センサーとZDS-NS型ADCの組み合わせでは、応答性が格段に改善されているでしょ? 実際に電流ステップ波を入力した時のそれぞれのA/D変換結果がこれ」 (図1)

図1. 電流ステップ波入力時の各出力比較

A君

「うわー、全然違いますね! これは3次のSINCフィルターですよね。へえー、OSRが小さいほど波形なまりが小さいですね」

K先輩

「これがディジタルフィルターの帯域の差よ」

A君

「応答性の点で、ΔΣ型と比較してZDS-NS型が有利なのはよくわかりました。でもSAR型との比較はどうなんですか? 同等の応答性なんですよね?」

M課長

「モーター電流検出においてオーバーサンプリングは非常に重要だから、応答性が同じならSAR型よりZDS-NS型の方が圧倒的に有利だぞ」

A君

「モーター電流検出でオーバーサンプリングが重要なのはなぜですか?」

M課長

「インバータをPWMスイッチングすると、モーターのU/V/W電流ラインにはスイッチングノイズが必ず乗っている。こういったノイズを抑圧するにはΔΣ型のオーバーサンプリングが有効、ってことだな」

A君

「なるほど、SAR型だと1点しかサンプルしないから、ノイズの影響を受けやすいってことですか (図2)
ZDS-NS型なら、ΔΣ型のようにスイッチングノイズの低減効果を持ちつつ、モーター電流検出における高速化のトレンドに対応できるんですね。ぜひ試してみたい!」

図2. モーター電流波形と各ADC動作比較

K先輩

「ところでZDS-NS型ADCには AK9255 と AK9255A という似て非なる物があるのよ」

A君

「ほんとだ。同じ16bitだけど、AK9255 は1MHz、AK9255A は540kHzですか。『レイテンシー』に差がありますね。 ……レイテンシーってなんですか?」
(図3)

図3. AK9255 / AK9255A のタイミング図

M課長

「レイテンシーもA/D変換データ出力の遅れだが、ADCの変換動作に起因する固定の遅延量なんだ。あるサンプリングデータが、どのくらい遅れてADCから出力されるかを示す値で、変換周期を基準に何回分遅れるか、と表したものだな。パイプライン型ADCのパイプライン遅延と似たようなものだ」

A君

「はあ」

M課長

「ゼロレイテンシーというのは AK9255A や 56A のように、変換トリガー信号に相当するCSN立下り信号入力後、SCLKを入力し続けるとA/D変換完了後にSDOピンからA/D変換結果が出力されるものだ。即時出力可能ってイメージだな。 一方で、AK9255 や 56 のようにレイテンシーが1ある場合は、次のCSN立下り信号入力後にSDOピンからA/D変換結果が出力される」

A君

「図を見てなんとなくわかりました。レイテンシーが1ある場合、1回目のCSNでデータ変換、2回目のCSNでデータ取出し、ってことですね。どうやって使い分けるんです?」

K先輩

「例えば間欠的な動作を行う場合は、ゼロレイテンシーが必須ね。一方、ずっと1MHzで変換し続けている場合は、レイテンシーが1あったとしてもデータ取り込みに支障は生じにくいよ」

A君

「間欠的な動作ってどういうことですか?」

K先輩

「ずっと変換し続けるのではなく、任意のタイミングでたまに変換させたい、ただ、変換時間は短くしたいっていう使い方ね。ZDS-NS型ADCで言えば、変換時間に関わるSCLKには最高速度の20MHzを入力して、出力レートに関わるCSNには十分遅い周波数、例えば10kHzを入力して低速動作をさせるのね」

M課長

「モーター電流検出がまさにそういうケースだな。出力レートはPWM制御周期と合わせるから10kHz、100マイクロ秒周期でいいが、A/D変換結果は変換開始から数マイクロ秒で欲しいような場合だ。この場合、CSNには10kHz、SCLKには20MHzを入力したい」 (図3)

A君

「確かに、AK9255 / 56 の場合だとN回目の変換データがすぐに入手できなくなっちゃうんですね。間欠動作させるには AK9255A / 56A のようなゼロレイテンシーの方が良さそうですね」

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