#12
SMR素子とADCを組み合わせて高分解能磁気式エンコーダーを作りたい!

旭化成エレクトロニクス (AKM) のA/Dコンバーター (以下ADC) 連載シリーズ第12話。
モーター製品を製造開発する架空のモーター企業の社員A君が、K先輩や上司のM課長とADCの知識を深めていくお話です。

今回は、AKMのSMR素子と AK924X を組み合わせた高分解能磁気式エンコーダを紹介します。

 

A君

「AKMのSMR素子は凄いって聞いたんですけど、そもそもSMRって何ですか?」

M課長

「SMRとは”Semiconductor Magneto-Resistive”の略称で、半導体磁気抵抗効果のことだ。印加磁場に応じて電気抵抗値が変化することを磁気抵抗効果と呼ぶんだが、その効果を応用した製品がMR素子だな。磁気式エンコーダで高分解能を目指すなら、AKMのSMR素子は要チェックだ!」

A君

「AKMのSMR素子は何がすごいんですか?」

M課長

「例えば代表的なMR素子であるAMRやGMR素子では、強磁性体の金属を利用している。強磁性体は磁場によって原理的に磁気ヒステリシスが発生するから、磁場の向きによって出力電圧に差が発生してしまうんだな。SMR素子は半導体だから磁気ヒステリシスが無い。これは大きな特長だ」

A君

「へえー、電流センサーの時もそうでしたけど、磁気ヒステリシスって厄介ですねー」

K先輩

「SMR素子の中でも、AKMのSMR素子は温度特性が極めて良好で、しかも素子ばらつきが極めて小さいのが特長ね」

A君

「SMR素子にも種類があるんですね。なんでエンコーダに応用できるんです?」

K先輩

「歯車とバイアス磁石を組み合わせると、歯車の山谷に応じて出力波形が変化するのね。それによって歯の位置、つまり回転角を検出できるのよ」 (図1)

図1. SMR素子を用いた回転角度検出

A君

「なるほど、歯車と組み合わせて使うんですね」

K先輩

「さらに出力波形は歪みの少ない正弦波だから、ADCを使った電気内挿で分解能を向上できるのよ。高分解能ADCと組み合わせれば、なんと磁気式エンコーダで20bitを超える回転角検出が可能なの!」

A君

「磁気式で20bit!? 磁気式って塵・埃・油などの耐環境性に優れているけれど、分解能は取れないっていうのが常識ですけど」

M課長

「ポイントは歯車の歯数分の分解能を稼げることだな。例えば128歯の歯車をSMR素子が検出すると、1歯ごとにSMR素子出力で1波分のA相とB相が出力される。つまり1周で128波だ」

A君

「へえー、歯車だけで7bit分解能もあるのかー。歯車の歯数が、光学式エンコーダのスリット分解能に相当しているんですね。 電気内挿用のADCは何がお勧めですか?」

K先輩

「AK924Xシリーズがうってつけね。SMR素子は出力振幅が100mV前後だから増幅が必要だし、 SMR素子って名前の通り『抵抗』だから後段回路を駆動する力が弱いのね。だから計装アンプのようなハイインピーダンス入力が望ましいよ」
(図2)

図2. SMR素子 + AK9242 構成図

A君

「しかも AK9242/43 なら、角度演算機能も内蔵されているし! デジタルで楽できるのも嬉しいです」

M課長

「ところで AK9242 は16bitのADCだが、角度演算モードでは18bit出力される仕様になっている。この理由はわかるかな?」

A君

「あれ、ほんとだ。角度演算モードだと2bit拡張した出力になるんですね。角度演算モードではADCが18bitになるんですか?」

K先輩

「ADCは16bitだけど、16bitデータを使った角度演算結果を16bitで出力するのは損なのよ」

A君

「え、なんで?」

K先輩

「話を簡単にするために、3bitのADCの場合に角度演算結果がどうなるか考えてみよう」

A君

「もし3bit出力なら1周を8通りまで表現できる、つまり最小で45度を表現できるってことですね」

K先輩

「単位円、つまり理想的なcos波,sin波を入力した時のリサージュ波形を、3bitでA/D変換するとどうなる?」 (図3)

図3. リサージュ波形とA/D変換

A君

「えーと、2つのADCがX軸とY軸をそれぞれ3bitで分割するから……。なるほど、8×8の方眼紙みたいに分割されるのか」

K先輩

「つまり2の6乗ね。この単位円をなぞるマス目の総数が1周の分解能、つまりエンコーダの角度分解能に相当するね。ほら、第一象限だけで7個あるでしょ。1周だと28個ね」

A君

「3bitのA/D変換結果を使った角度演算結果を表すのに、3bit出力だと全然足りないんですね! 28通りを表現できるbit数が必要なのか……つまり5bitか」

M課長

「これが角度演算モードでADC分解能から2bit拡張する意味だな」

K先輩

「円が小さくなると角度分解能も落ちるから、なるべく大きな円にするのが重要ね」

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