#15
A/Dコンバーターのサンプリング動作ってどうなっているの?②

第15話。前回に引き続き、SAR型とZDS型のサンプリング動作の詳細を解説します。

 

A君

「えーと……、キックバックのあたり、全然ついていけなくって」

K先輩

「キックバックっていうのは、ADCの入力容量に貯まったままの、前回の入力電圧値に相当する電荷量が、サンプリング開始のタイミングにADCの外へと逆流することよ」

A君

「はぁ」

M課長

「キックバックや、前回説明したアクイジション時間を定性的に理解するには、水をイメージするといいぞ」

A君

「水ですか?」

K先輩

「入力容量と入力信号電圧と電荷量の関係性は、コップに貯める水と同じイメージで考えるとわかりやすいよ。ADCの入力部には入力容量というコップがあって、アナログ入力信号電圧に応じてコップに所望の水位まで水を貯めたい、と思ってね」

A君

「確かに電気回路の授業では、電圧を水位、電流を水流で表していましたね」

K先輩

「ADCのアナログ入力を駆動するのが難しいのは、このコップに正確に所望の水位まで、短時間に水を貯めにいく必要があることね。ずれた分だけエラー成分になってしまうから、足りなくても入れすぎてもダメ」

A君

「短時間っていうのがアクイジション時間の長さに関係しているわけですか」

K先輩

「そうそう。それで、コップが大きいと所望の水位まで貯めるための水量が増えるでしょう。入力容量が大きいということだね」

A君

「その水量は前段アンプが供給するわけですか。それを短時間で、っていうのが大変そうですね」

K先輩

「前段アンプは、自分が貯めたい水量と、今ADCに貯まっている水量を比較して、差がなくなるように蛇口を開け閉めしているイメージね」

A君

「その開け閉めには、かなりのスピードが要求されそうですね」

K先輩

「アンプのデータシートには『GB積』という項目があって、その特性が速いほど、蛇口の開け閉めを速く強力にできるってイメージね」

A君

「ということは、アクイジション時間が長いほど、前段アンプは楽ができるわけですね。入力容量も小さい方が、楽ができそうな気がします」

K先輩

「それでキックバックを例えると、サンプリングが開始されるタイミングで、前回の貯めていた水量が逆流してしまうのね。だから、次に貯めたい所望の水量へ貯め直すのは、逆流した水量もエラーになるのね。それなりにしっかりした水道の蛇口が必要になるでしょ」

A君

「うーん、定性的にはわかった気がします」

K先輩

「ADCのアナログ入力を駆動するところは、なかなか理屈だけではわからないんだよね。手を動かして格闘するのも必要だよ」

A君

「いかにも大変そうだなぁ」

K先輩

「そこでZDS型とSAR型の話に戻ると、SAR型は『コップが大きい』『逆流も大きい』『貯めるための時間が短い』ことが多いのよ」

A君

「『貯めるための時間が短い』ってのがアクイジション時間のことですよね。なんでZDS型だと長くできるかは、前回教えてもらいました(……よくわからなかったけど)」

M課長

「なぜZDS型はSAR型に比べて入力容量が小さくできるか、というと、SAR型で高分解能のADCを実現するには、内蔵している容量素子の製造バラつきを小さくする必要があって、それを実現するために入力容量自体を大きくしている製品が多いんだな。一方でZDS型は基本構成がΔΣ型だから、内部でオーバーサンプリングを行うことで高分解能を実現できる。ADCの分解能向上と入力容量の製造バラつきは、直結していないんだよ。だから入力容量を小さくしつつ高精度を実現できるってわけだ」

A君

「なんとなーく、わかりました」

A君

「これでAKMのADCの概要は掴めた気がします! ありがとうございました!」

K先輩

「最後に表でまとめると、こんな感じね。全ての製品が2チャンネル独立のADCを内蔵しているよ」

M課長

「次は、自分でADCを使った製品を作り上げてみることだな。いろんな苦労がわかるぞ」

A君

「更なる成長が必要だなぁ。セミナーでレベルアップしてきます!」

K先輩

「成長したA君が『A/Dコンバーターの基礎知識 中級編』をしてくれてもいいよ」

A君

「ここにきて、なんという無茶振ぶり……」

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