ガスセンサーの種類と仕組み

ガスセンサーには様々な方式があり、対象ガスや用途に合わせて、最適なガスセンサを選ぶことが大切です。一般的なガスセンサーの方式として、NDIR : Non Dispersive InfraRed (非分散型赤外線吸収) 方式 、半導体式、電気化学式があります。

本ページでは、各ガスセンサーの検知方式の原理とそのメリット・デメリットを説明します。

ガスセンサーの種類と特徴

ガスセンサーはその検出原理によって、検出対象となるガスが異なります。また、各性能面でも長所・短所が存在します。代表的な 3 つの検出方式を相対的に比較したのが下記の表となります。 (✓ が長所、× が短所。)

表 1. ガスセンサーの種類と特徴

  NDIR方式 半導体方式 電気化学方式
原理 ガスの赤外線吸収を利用した検出方法 酸化金属表面へガスを吸着させる検出方法 検知極ガスを酸化還元反応させる検出方法
精度 ✓​ × ×
消費電流 ✓​ × ×
寿命 ✓​ × ×
応答速度 ✓​ × ×
サイズ ✓​ × ×
測定対象ガス 二酸化炭素
可燃性ガス
冷媒ガス
呼気中アルコール
可燃性ガス
冷媒ガス
VOC
(揮発性有機化合物)
毒性ガス

NDIR 方式

NDIR 方式のガスセンサーは、ガス分子が特定の波長の赤外線を吸収する特性を利用した方式です。代表的なガスである CO2 は 4.3um、冷媒ガスの R32 は 3.3um の帯域の赤外線を吸収します。この NDIR 方式は、赤外線光源 (Light emitter) と、赤外線センサー (Infrared sensor)、筐体 (Optical cavity) から構成されています。赤外線光源から発せられた赤外線は、筐体内に存在するガス分子に吸収されて減衰しながら赤外線センサーに到達します。到達した赤外線量の違いから、ガス濃度 (Gas concentration) を算出することができます ( 図 1 ) 。

そのときのガス濃度に対する赤外線センサーの挙動を図 2 に示します。ガス濃度が高いほど、より多くの赤外線がガス分子に吸収され赤外線センサーの出力 (Infrared sensor output) が小さくなります。一方で、ガス濃度が低いと、この出力が大きくなります。この出力をランベルト・ベールの法則に基づいて計算し、ガス濃度を算出できます。

 図 1. NDIR方式の原理 図 1. NDIR方式の原理
 図 2. ガス濃度と赤外線センサー出力の関係 図 2. ガス濃度と赤外線センサー出力の関係

ガス濃度を測定する上で、NDIR 方式が他の方式と比べて優れている点は、他の方式のガスセンサーが苦手とする COなどの不活性なガスも検出できる点です。NDIR 方式は、ガスの活性・不活性に関係なく、赤外線領域に吸収を持っていれば、精密に測定できます。一方で、水素や酸素などは、その対称な分子構造に由来して赤外線領域に吸収がないため、測定することはできません。また、NDIR 方式のガスセンサーは、搭載する光源と赤外線センサーによって超低消費電力や超高速応答、そして安全性の高いガスセンサーにすることが可能です。

NDIR の方式の詳細はこちらでご紹介します。

半導体方式

半導体方式のガスセンサーは、ヒーター (>300℃) により熱せられた酸化金属 (Metal oxide) 表面に吸着している酸素が、検知対象のガスと反応することにより、センサー抵抗値が変化する特性を利用した方式です。ガスが吸着する酸化金属部には酸化スズや酸化亜鉛など n 型の金属酸化物が用いられており、半導体プロセスを用いて作ることができるため、半導体式のガスセンサーは量産性が高く比較的安価です。

一方、この方式では、酸化金属表面へガスを吸着させる必要があり、CO2 などの化学的に安定したガス分子の検出には不向きで、測定可能なガスが限られるという短所も存在します。

図 3. 半導体方式のガスセンサー 図 3. 半導体方式のガスセンサー

電気化学方式

電気化学式のガスセンサは酸化還元反応を利用してガス濃度を得る方式です。

検出したいガス分子が検知極で酸化反応を起こしイオンと電子を発生させ、イオンは電解液、電子は外部回路を経由して対電極に移動し還元反応が起こります。代表的なガスとしてCOがあり、COが検知極と反応し、CO2となり、その際の化学反応を利用します。このとき外部回路に流れる電流はガス濃度に比例して増えるため、電流値をモニターすることでガス濃度を算出することができます。

他ガスに干渉されない、結露に強いという良い面を持つ一方で、寿命が短いため定期的なメンテが必要だと言われています。

図 4. 電気化学方式のガスセンサー 図 4. 電気化学方式のガスセンサー

センスエア (Senseair) について

2018 年に旭化成エレクトロニクス (AKM) グループの一員となった Senseair は、非分散型赤外線 (NDIR: Non-Dispersive Infrared) 方式の技術を用いたガスセンサーのプロバイダーです。常に新しいガスセンサーの技術開発および量産化を目指しています。