センスエアの微燃性冷媒 (R32) センサーが選ばれる理由

規制の動向を見据え、安全性の高いガスセンサーを発売

可燃性ガスセンサー

多くの空調機で使われている R32 の冷媒ガスは微燃性ですが、大型空調機では大量に使われるため、燃えてしまうというリスクがあります。そのため、冷媒ガスの漏れを検知するセンサーを搭載する製品が増えています。ただ、漏れたガスの着火源になるリスクなど、これまでのセンサーには様々な課題がありました。そこで今回は、こうした課題を解決するために旭化成エレクトロニクス (AKM) のグループ会社、センスエアが新たに開発した微燃性冷媒 (R32) センサーをご紹介します。

空調機の冷媒漏れリスクと規制の動き

こうした冷媒の特性を考慮し、特に大型空調機では冷媒漏れを検出するガスセンサーを備えた製品が増えています。ガスセンサーをめぐる規制は国や地域によって異なりますが、米国ではセンサー性能に関する規制を強化する動きもあります。米国に続いて、各地域の動向も注視されています。

空調機に用いられる冷媒にはいくつかの選択肢がありますが、地球環境問題への意識の高まりを受けて、各メーカーは地球温暖化係数の低いものを採用するようになりました。ただ、一般に地球温暖化係数の低い冷媒ほど、可燃性は高くなる傾向があり、冷媒漏れによる火災のリスクが高まります。

これらの動向を踏まえつつ、センスエアは、微燃性冷媒 (R32) センサーを開発しました。すでに実績のある当社の CO2 センサーと同様のテクノロジーを用いて、冷媒ガスを検知できるセンサーが開発されています。

そのテクノロジーはNDIR方式と呼ばれています。空調機向け微燃性冷媒センサーとしては、これまで半導体方式が一般的でした。ただ、半導体方式には課題も多く、解決策を探っていた空調機メーカーは少なくありません。その解決策になり得るのが、空調機の冷媒として広く利用されているR32に対応するセンスエアのNDIR方式微燃性冷媒 (R32) センサーです。

NDIR方式と半導体方式、それぞれの特性

NDIR 方式がガスによる赤外線吸収を計測するのに対して、半導体方式はガスと半導体の酸化還元反応によって変化する抵抗値の変化を検出します。まったく異なる方式であり、それぞれが独自の特徴を有しています。

NDIR 方式では、センサー内にある光源から一定の光を照射し、受光素子に届けます。センサー内に取り込まれた可燃性ガスには光源からの光が当たります。可燃性ガスには特定の波長の光を吸収する性質があるため、受光素子は、光源から照射された光に対して、吸収により減衰された光を検知します。この光の減衰度合いから可燃性ガスの濃度を検出できます。NDIR 方式のガスの選択性は高く、可燃性ガス以外には反応せず、高い検知精度が確かめられています。その特長については後述します。

NDIR 方式 NDIR 方式

一方、半導体方式はガスに反応する素材をヒーターで温めて感度を高め、可燃性ガスとの化学反応を検知するというアプローチです。湿度によって反応が変化することがあるなど、精度面での課題が指摘されています。狙ったガスだけを検知するガス選択性は低いといえるでしょう。

 こうした特性の違いから、近年は NDIR 方式に注目する空調機メーカーが増えています。

半導体方式 半導体方式

着火リスクを排除した高い安全性と高信頼性・長寿命

センスエアの微燃性冷媒 (R32) センサーは、NDIR方式を採用しつつ、光源に LED を用いることでユニークな強みを獲得しています。キーワードは安全性、高信頼性/長寿命、超低消費電力、小型で高精度です(図)。

 

第1に安全性について。LED はほとんど発熱がなく、センサーは周囲の環境とほぼ等しい温度で稼働します。したがって、可燃性ガスが漏れたとしても着火源になりません。安全性の高さは、製品の最も重要な優位性であると私たちは考えています。

同じ NDIR 方式のセンサーの中には、光源としてランプを採用しているものもあります。発光時、ランプのフィラメント 部は 1500℃ 以上になり、着火源になるリスクが残ります。一部、MEMSヒーターを用いたセンサーもありますが、こちらも700℃程度で発熱・発光します。そのため、R32 の発火温度を考慮すると、同様のリスクは排除できないでしょう。

着火リスクを排除した高い安全性と高信頼性・長寿命 着火リスクを排除した高い安全性と高信頼性・長寿命

第2に高信頼性と長寿命。当社の調査結果によると、ランプ切れなどによる故障の確率は10年で 1000ppm 程度でした。ランプ切れになると、部品交換などのメンテナンスを行う必要があり、こうした保守費用がライフサイクルコストを押し上げます。

一方、LED の長寿命はよく知られています。センスエアの微燃性冷媒 (R32) センサーに用いられるLED の故障確率は、15年で 1ppm 以下です。加えて、ABC (Automatic Baseline Correction*) という独自開発の補正アルゴリズムを有しており、長期にわたって、メンテナンスフリーで動き続けます。当社製品はイニシアルコストという意味では、半導体方式や他の光源を用いた NDIR 方式のセンサーと比べると高価ですが、長期稼働を前提とする場合にはメリットが大きいと考えています。

 

*ABCとは
ABC (Automatic Baseline Correction)  : 一定期間内で測定されたデータに基づいて、センサーの出力値を補正する方法です。

*NDIR方式の特長についてはこちらの記事も参照ください。

超低消費電力、高精度という強み

第3 に超低消費電力です。
これは LED そのものの特性です。ランプの場合には、電流を流すとまずフィラメントを加熱してから発光するので、発光までに数百ミリ秒の時間がかかります。これに対して、センスエアの微燃性冷媒 (R32) センサーに使われる LED は、電流を流すと数百マイクロ秒で発光します。加熱の必要がないので、消費電力を大きく抑えることができます。

第4 の小型で高精度という特長は、センスエアのユニークな技術によるものです。
NDIR 方式では光源と受光素子の距離を広げるほど、光がガス分子に当たる頻度は高まります。それに伴い、検知精度も高まりますが、その反面センサーそのもののサイズが大きくなってしまいます。そこで、センスエアはセンサー内部で光を何度も反射させる独自の光路設計技術を確立することで、小型にもかかわらず光源と受光素子との距離を伸ばしました。こうして、コンパクトかつ高精度の微燃性冷媒 (R32) センサーが生まれました。
規制の強化に伴い、センサーに対する要求が高まっている中、センスエアは精度や応答速度の規格要求に準拠できる性能のセンサーを提供することができます。

サステナビリティーを意識したガスセンサーのニーズは高まる

4つの強みを持ち、従来の課題へのソリューションを提示するセンスエアの微燃性冷媒 (R32) センサー。その先進的な技術に注目する空調機メーカーは増えています。
空調機において、冷媒ガスの漏れに備え、それをいち早く検出することが求められていきます。将来的には、地球温暖化係数を下げるために、より燃焼リスクの高い冷媒ガスが用いられる可能性もあるかもしれません。

この分野における今後の各国・地域の規制の動きは必ずしも明確とはいえませんが、サステナビリティーや安全に関わる規制は厳しくなる方向でしょう。私たちは、信頼性や安全性の高いガスセンサーへのニーズはますます高まると考えています。

センスエア (Senseair) について

2018 年に旭化成エレクトロニクス (AKM) グループの一員となった Senseair は、非分散型赤外線 (NDIR: Non-Dispersive Infrared) 方式の技術を用いたガスセンサーのプロバイダーです。常に新しいガスセンサーの技術開発および量産化を目指しています。