磁気センサーを 3D (3軸) にする意義

3D 磁気センサー

皆さんは「3D (3軸) 磁気センサー」 という言葉をご存じでしょうか。磁気センサーの歴史は古く、また様々な種類の磁気センサーが世の中には存在しますが、3D 磁気センサーは比較的新しい種類の磁気センサーです。従来の磁気センサーが1軸方向から印加される磁場しか検知できないことに比べ、3D 磁気センサーは X,Y,Z 軸方向から印加される3次元的な磁場を同時に検知できる点が大きな違いです。このページでは 3D 磁気センサーについて 3 つの特長を挙げて解説します。

センサーのレイアウト設計を容易に

代表的な磁気センサーとしてホールセンサーや MR センサーが挙げられます。磁石などの磁場発生源と組み合わせることで開閉角度や物体移動量の検知など動きに関する様々なアプリケーションが実現されていますが、”部品レイアウト”は磁気センサーを使用する際に気をつけなければならない重要なポイントの一つです。

前述の磁気センサーは原理的に”特定の一方向”からやってくる磁場のみしか捉えることができません。そのため、磁場発生源とセンサーの位置関係やモノの動き方がアプリケーション性能を大きく左右します。しかしながら、製品の小型化・部品の高集積化のニーズに伴いセンサーや磁性部品の最適なレイアウトが困難となり、お客様の製品開発において、設計時には予見できず試作段階で結果的にターゲットスペックが未達となり、その時点で弊社に相談される事例が増えてきました。

3D 磁気センサーは感度に方向依存性がないため検出範囲が広く、センサーに対してどの方向から磁場が印加されたとしても磁場を検出することが可能です。つまり、3D 磁気センサーを用いることでセンサー / 磁石レイアウトに対する制約を低減し、設計自由度の向上に貢献することができます。同様に各軸方向から取得したデータを解析することで実装誤差や個体ばらつきに対してロバストなシステムを組み上げることも可能です。

レイアウト自由度の違いのイメージ
レイアウト自由度の違いのイメージ

1軸方向しか取れない磁気センサーは検出範囲が狭いが、3D 磁気センサーは検出範囲が広く、レイアウトの自由度が高い。

レイアウト自由度の違いのイメージ

3 次元的なあらゆる動作を検出

物体 (磁性体) の移動量の検出にはリニアホール IC が広く使われていますが、リニアホール IC が移動量を正確に検出できるのは ”物体 (もしくはセンサー) が "直動" することが前提条件となります。例えば、センサーに磁石が真っすぐ近づく / 遠ざかるといった動作は詳細に検出可能ですが、センサーとの距離が不変のまま磁石のみ回転するという動作に関してはリニアホール IC では検出することができません。同様に、センサーに対して物体が三次元的に移動するような動作もリニアホール IC では正確に捉えることができません。

複雑な動作を捉えられない原因は、リニアホール IC が 1 軸方向 (Z 軸方向) の感度しか持ち合わせていない為です。「レイアウト自由度の向上」の項目で図示されているように磁場検出エリアが狭い点に加え、検出エリア内に物体が配置されていたとしても、回転動作のような感度軸に対して磁場が変化しない物体の動作はリニアホール IC では捉えられません。

3D 磁気センサーはその名の通り X,Y,Z 軸方向に磁気感度を持っているため、上記のような問題は起こりません。複雑な動作の検出には 3D 磁気センサーが適しているといえます。

磁性体が回転する場合の磁場変化の例
磁性体が回転する場合の磁場変化の例

磁性体が回転する場合の磁場変化の例

外乱磁場に強いシステムを実現

磁気センサーを使用する上で必ず課題となるのが、検出ターゲットとなる動体由来ではない磁場発生源による悪影響、いわゆる ”外乱磁場” への対応です。特に使用環境に依存した外乱磁場が印加される場合はアプリケーション性能に大きな影響を及ぼします。

例えばホールスイッチを用いたドア開閉状態をモニタリングするセキュリティ製品の場合、ドアに取り付けられた磁石から印加された磁場がホールスイッチの閾値を上回る / 下回ることで開閉状態を判断します。しかし、ホールスイッチは1軸方向にしか軸感度を持っていない為、印加されている磁場がドアに取り付けられている磁石由来なのか、それともそれ以外の磁場発生源由来 (外乱磁場) なのかを判別することができません。つまり、泥棒などの悪意を持った人間が別の磁石をホールスイッチに近づけ印加磁場を操ることで、 ”意図的に開閉センサーを騙す” ことも物理的に可能なのです。一方、3D 磁気センサーを用いた場合は、センサーに印加されている多軸磁場の方向成分を分析することで、ドアに取り付けられた磁石由来の磁場と外乱磁場とを切り分けられます。つまり、外乱磁場に強いセキュアなドア開閉検知システムを構築することができます。

ドア開閉検知用途における3D 磁気センサーのメリット例

ドア開閉検知用途における3D 磁気センサーのメリット例

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