#04
光学式エンコーダーの動作原理と特長

エンコーダー 基礎知識

こんにちは。エンコーダー兄妹です。

わたしたちがいままでに得た知識を整理してみなさんに紹介している連載の今回は第 4 話です。

これからエンコーダーを勉強したい人、自分はエンコーダーを扱っていないけど社内の他部署の人がエンコーダーを扱っているので仕事内容を知りたい人、キンキンに冷えてやがるビールはありがたいけど悪魔的と思っている人・・・そんな人たちのお役に立てたら幸いです。

第 2 話と第 3 話ではエンコーダーの仕組みについて紹介しました。今回は光学式エンコーダーの動作原理と特長を紹介します。.

まとめ

  • 光学式エンコーダーはスリットを通過した光パルスの信号を検出し、電気信号に変換して出力する。
  • 磁気式に比べ精度と分解能を高めやすく、強い磁界が発生する用途で使える。
  • 反射型は小型化・薄型化が容易。かつ積み上げ方式で製造でき、組み立て工程を簡略化できる。

4-1. 光学式エンコーダーの構造

光学式エンコーダーは回転の位置情報を光パルスの信号として検出します。発光素子、受光素子と、コードホイールと呼ばれる放射方向にスリット (穴) をあけた円盤で構成されます。モーターなどの回転軸に取り付けられたコードホイールが回転すると、固定された発光素子から発せられた光がコードホイールのスリットを通過するかしないかで光パルスが生成されます。この光パルスを受光素子で検出し、電気信号に変換して出力します。

図 4-1. 光学式エンコーダーの構造模式図 図 4-1. 光学式エンコーダーの構造模式図

発光素子 (LED)

光学式エンコーダーで使用される発光素子は一般的に安価な赤外光 LED ですが、光の拡散を抑えるため波長がより短い有色 LED が使われることもあります。また、高性能・高分解能が要求される用途では高価なレーザーダイオードが使用されます。

レンズ

発光素子から発せられる光は指向性の少ない拡散光なので、凸レンズを使って平行光にします。

コードホイール (可動スリット) 

コードホイールは発光素子から発せられる光を通過/遮断させるためのスリット (穴) をあけた円盤です。材質は、振動や温湿度の耐性が強く産業分野で用いられる金属製、安価で大量生産に向き民生用途で使われる樹脂製、高精度・高分解能が要求される用途で使われるガラス製があります。また、コードホイールを通過して受光素子に入力される光の通過/遮断を明確にするため、コードホイールと向い合せた位置に固定スリットを配置する場合もあります。

受光素子

受光素子は一般的に、シリコン (Si) 、ゲルマニウム (Ge) 、インジウムガリウムリン (InGaP) などの半導体材料で作られたフォトダイオードまたはフォトトランジスタが使われます。

4-2. 光学式エンコーダーの動作原理

構造による分類

光学式エンコーダーは構造によって 2 つの方式に分類されます。発光素子と受光素子でコードホイールを挟み込む「透過型」と、発光素子と受光素子を同一の平面上に配置し、コードホイールで光を反射させる「反射型」があります。

図 4-2-1. 光学式ロータリーエンコーダー透過型 (左) と反射型 (右) の模式図 図 4-2-1. 光学式ロータリーエンコーダー透過型 (左) と反射型 (右) の模式図

透過型

発光素子から発せられた光がコードホイールのスリットを通過するかしないかを受光素子で検出します。

  • 信号精度を高めやすい
  • 光学経路が比較的単純なので開発容易

という長所があります。

反射型

発光素子から発せられた光がコードホイールで反射するかしないかを受光素子で検出します。

  • 小型化・薄型化が容易
  • 積み上げ方式で製造できるため組み立て工程を簡略化できる

という長所があります。

 

出力される電気信号の形式による分類

光学式エンコーダーは出力される電気信号の形式によって 2 つの方式に分類されます。回転円盤の角度変化 (移動量) を出力するインクリメンタル方式と、回転円盤の絶対角度を出力するアブソリュート方式があります。インクリメンタル方式とアブソリュート方式については第3話で詳しく説明しています。

高分解能化、高精度化

光学式エンコーダーの分解能は基本的にはコードホイールのスリット数で決まります。したがって、高分解能化するためにはコードホイールのスリット数を増やせばいいのですが、エンコーダーの小型化と両立させるためには 1 つひとつのスリットの面積を小さくする必要があります。そうすると構成部品の組み立てに高い精度が要求されるようになるため、どこかで物理的な限界を迎えます。

そこからさらに高分解能化するためには出力信号の A 相 B 相をパルス信号ではなく疑似正弦波信号とし、電気的に内挿倍する方法があります。この手法を電気内挿といいます。このように、光学式エンコーダーは発光素子、コードホイール、受光素子などの構造を最適化し、疑似正弦波のひずみを小さくすることで高分解能・高精度を実現できます。

図 4-2-2. 疑似正弦波信号 (上) とパルス信号 (下) 図 4-2-2. 疑似正弦波信号 (上) とパルス信号 (下)

4-3. 光学式エンコーダーの特長と主な用途

光学式エンコーダーは光がスリットを通過するかしないかを検出する仕組みであることから、スリットの形状を工夫することによって精度と分解能を高めやすいという特長があります。このため、精度が必要なサーボ制御や中空貫通軸モーターの制御などで用いられます。また、周囲の磁界から影響を受けないため、強い磁界が発生する用途でも使用可能です。このため、大径モーターが使われる機器などで用いられます。

まとめ

  • 光学式エンコーダーはスリットを通過した光パルスの信号を検出し、電気信号に変換して出力する。
  • 磁気式に比べ精度と分解能を高めやすく、強い磁界が発生する用途で使える。
  • 反射型は小型化・薄型化が容易。かつ積み上げ方式で製造でき、組み立て工程を簡略化できる。

いかがでしたか?

今回は光学式エンコーダーの動作原理と特長について紹介しました。動作原理と特長、光学式エンコーダーが使われる用途をご理解いただけたと思います。

次回は磁気式エンコーダーの動作原理と特長について解説します。それでは、また会いましょう。