磁気センサーとは

#01 磁気センサー 基礎知識

磁気センサーとは、磁石や電流が発する磁気や地磁気などの大きさと向きを検知するセンサーです。磁気は私たちの身近にありながらも目には見えないため、磁気センサーを使って検知します。一口に磁気センサーといっても、実に様々な種類があります。

以下に、代表的なセンサーの種類とその特徴を解説します。

コイル

数ある磁気センサーの中でシンプルなセンサーです。コイルは、磁束密度の変化を検出することができます。

図1のように、コイルに磁石を近づけると、コイル内の磁束密度が⊿B増加します。すると、コイルには磁束密度の増加を妨げる向きに磁束を発生するような誘導起電力・誘導電流が発生します。逆に、磁石をコイルから遠ざけると、コイル内の磁束密度が減少するため、コイルには磁束密度を増加させる向きに誘導起電力・誘導電流が発生します。

図1. コイルの原理図 図1. コイルの原理図

また、磁石を動かさない時は磁束密度の変化が無いため、誘導起電力・誘導電流は発生しません。この誘導起電力の向きと大きさを測定することで、磁束密度の変化を検出することができます。

コイルは簡単な構造のため、壊れにくいという特徴があります。一方で、出力電圧が磁束密度の変化速度に依存するため、磁束密度の変化が非常に小さい場合や変化が全くない場合の検知には、コイルは適していません。

リードスイッチ

左右から伸びる金属片 (リード) が、オーバーラップする位置で隙間を空けてガラス管に封入されたセンサーです。外部から磁場を印加するとリードが磁化され、オーバーラップしているリード同士が吸引し合い接触して、スイッチがオンします。

図2. リードスイッチの原理図 図2. リードスイッチの原理図

ホール素子

ホール素子はホール効果を用いた素子で英語ではHallと書きます。Hallはホール効果を発見したHall博士の名前に由来し、電流が流れている物体に対し電流に垂直に磁場をかけると電流と磁場の両方に直交する方向に起電力が現れる現象に基づいています。

半導体薄膜などに電流を流すと、ホール効果によって磁束密度や向きに応じた電圧が出力されます。このホール効果を用いて磁気を検出する素子のことをホール素子といいます。(図3)

図3. ホール素子 (N型半導体) の原理図 図3. ホール素子 (N型半導体) の原理図

ホール素子は磁束密度の変化がない静磁場であっても、磁場の有無を検出することができるため、磁石との組み合わせで使う非接触スイッチや、角度センサーから電流センサーまで、様々な用途で使われています。また、ホール素子を用いた地磁気センサーは、スマートフォンなどで広く使われています。

磁気抵抗素子

磁気が印加されると抵抗値が変化する材料を用いて磁場を検出する素子を磁気抵抗素子 (MR: Magneto Resistive) といいます。

磁気抵抗素子には、半導体磁気抵抗素子 (SMR) のほか、強磁性体薄膜材料を用いた異方性磁気抵抗素子 (AMR:Anisotropic Magneto Resistive) や巨大磁気抵抗素子 (GMR:Giant Magneto Resistive) 、トンネル磁気抵抗素子 (TMR:Tunnel Magneto Resistive) という4つの種類があります。

半導体磁気抵抗素子 (SMR)

ホール素子が、ローレンツ力によって生じたホール電圧を測定するセンサーであるのに対し、半導体磁気抵抗素子は、ローレンツ力によって生じた抵抗値の変化を利用したセンサーです。

図4は、AKMでも多く製造されているN型半導体磁気抵抗素子 (SMR:Semiconductor Magneto Resistive) の抵抗値が変化する様子を表しています。SMRの構造は、半導体薄膜の上に金属の電極が乗っています。半導体薄膜に図のような時計回りの電流が流れている場合を考えます。この時、N型半導体のキャリアである電子は反時計回りに流れており、その速度ベクトルをvとします。そこに図の様な向きの磁場Bを印加すると、電子はローレンツ力を受けて図の様に経路が曲げられ長くなるので、抵抗値が上がります。

図4. 半導体磁気抵抗素子の原理図 図4. 半導体磁気抵抗素子の原理図

SMR素子を使用したセンサーは、歯車の回転の検出などに利用されています。

 

異方性磁気抵抗素子 (AMR)

強磁性体膜の磁化の向きが電流の方向に平行な場合 (a) と、磁化の向きが電流の方向に垂直な場合 (b) とで、電子の散乱度合いが変化し抵抗値が変化します。

図5. 異方性磁気抵抗素子の原理図 図5. 異方性磁気抵抗素子の原理図

巨大磁気抵抗素子 (GMR)

強磁性体 (ピン層) -非磁性体金属-強磁性体 (フリー層) の積層膜で、ピン層とフリー層の磁化が反平行の場合 (a) と、ピン層とフリー層の磁化の向きを揃えた場合 (b) とで、電子の散乱度合いが変化し抵抗値が変化します。

図6. 巨大磁気抵抗効果の原理図 図6. 巨大磁気抵抗効果の原理図

トンネル磁気抵抗素子 (TMR)

強磁性体 (ピン層) -絶縁体-強磁性体 (フリー層) の積層膜で、ピン層とフリー層の磁化が反平行の場合 (a) と、ピン層とフリー層の磁化の向きを揃えた場合 (b) とで、トンネル効果により絶縁体を通過する電子の割合が変化し抵抗値が変化します。

図7. トンネル磁気抵抗素子の原理図 図7. トンネル磁気抵抗素子の原理図