リニアホール IC
#10 磁気センサー 基礎知識
リニアホール IC は、rail to rail のアナログ出力をするセンサーで、後段のマイコンでの処理が簡単なことから、ホール IC と同じく白物家電、産業機器で使用されています。
リニアホール IC はアナログ出力なので、デジタル出力のホール IC に比べ、精度のよい位置検出ができるメリットがあります。このページではリニアホール IC の原理とアプリケーションを説明します。
リニアホール IC の原理
リニアホール IC は、内蔵するホール素子の出力電圧を、その後段の処理 IC により増幅し、0~Vcc の範囲でリニアに出力するセンサーです (図 1)。この処理 IC の増幅率の違いにより、様々な感度のリニアホール IC がラインアップされています。
磁場が印加されていない場合の出力は Vcc/2 となります。N極やS極の磁場印加により出力が増減します (0~Vcc)。仕様範囲外の磁場が印加された場合、出力は飽和します。
そのため、測定したい磁場範囲に応じて最適な感度のリニアホール IC を選定することで、リニアホール IC の出力範囲を有効に使った検出が推奨されます。
リニアホール IC もホール IC 同様、出力電圧範囲が電源で規定されるため、後段のマイコンで受けやすくなるメリットがあります。
代表的なアプリケーション例
(1) 液面レベル検出可能な燃料計・液面計センサー
燃料計、液面計センサーは液体燃料や貯水タンクの残量や貯水量を検知するセンサーです。非接触でかつ容器の外側から液面の高さ検出が可能で、機械的な接触や電気回路をタンクの外側に設置出来る為、可燃性の液体でも使えるメリットがあります。通常はタンクの液面の上限 (満杯) や、下限 (空) 検出として使われます。液面位置検出の主要構成部材は、磁石、リニアホール IC、フロートです。
図 2 の (1) のようにタンクに十分に液体があるときは、S 極の磁場が印加されており、リニアホール IC の出力は 0V 付近になります。
液面が下がるとともにリニアホール IC に印加される S 極の磁場が減少し、出力が徐々に増加します。図 2の (2) のように、磁石の S 極と N 極の境目がリニアホール IC の正面に来ると、S 極の印加磁場が 0 になるので、リニアホール IC の出力は中点電圧 (例えば電源電圧が 5V の時は 2.5V) となります。
さらに水面が下がると今度は N 極の磁場が少しずつ印加されるようになるため、リニアホール IC の出力は徐々に増加していきます。図 2 の (3) のように液体がなくなったとき、リニアホール IC には N 極の大きな磁場が印加されるため、電源電圧と同じ位の電圧が出力されます。
リニアホール IC を使うと、スイッチタイプホール IC とは異なり、出力がアナログなので液面の下限位置だけでなく液面のレベルを検出できます。また、磁石やセンサーを複数使用することで検出範囲を拡張することが可能です。ただし、リニアホール IC の仕様磁場範囲・磁石サイズ・磁石とリニアホール IC との距離などを総合的に検討する必要があります。
(2) 操作用入力レバー
操縦用入力レバーは、ゲームやラジコン・装置の操作に使われる、スティックタイプのアナログインターフェイスです。
操縦用入力レバーの主要構成部材はレバー、ヒンジ、円形磁石、リニアホール IC です。
レバーを固定するヒンジの真下にホール IC を配置します。
次に、図 3 の(2) のようにレバーがストロークの中間位置にあるときに円形磁石の S 極と N 極の境がホール IC の真上にくるように取り付けます。
この配置にすることで、レバーの角度がおおよそ ±30° の間でリニアな出力を得ることができます。
(3) オープンループ型電流センサー
磁気式の電流センサーは、測定対象の電流線の周囲に発生する磁場 (磁束密度) を測定することで、電流量を検出するセンサーです (図 4)。
「#05 低ドリフトホール素子の ” (2) オープンループ型電流センサー” 」のホール素子をリニアホール IC に変えただけの構成ですが、リニアホール IC を使うことでホール素子後段の増幅回路が不要になるメリットがあります。