スイッチタイプホール IC

#08 磁気センサー 基礎知識

ホール IC は High/Low のデジタル出力をするセンサーで、磁場の強弱を検知するホール IC をスイッチタイプホール IC と呼びます。このページでは、スイッチタイプホール IC のアプリケーション例について説明します。

スイッチタイプホール IC とは ?

特徴

スイッチタイプホール IC は、検知する磁場により片極検知、両極検知、両極検知  (2 出力)  の 3 種類に分けられますが (「ホール IC の原理と種類」参照) 、基本的には印加磁場の強弱に応じて、ON/OFF 動作をするデバイスです。この特性を生かして、磁石の有り無し、接近、通過などを検出する用途に使われます。

代表的なアプリケーション例

(1) 位置検知センサー

位置検知センサーは、家電製品や産業機器の安全カバー、アクテュエーターの原点・終点を検出するためのセンサーです。
同様のセンサーとしては、有接点タイプの機械式スイッチや非接触タイプの光学式スイッチ (フォトインタラプタ―など) がありますが、ホール IC を使うことで以下のメリットがあります。

  • 機械的な接点がなく摩耗しないため、機械式スイッチより長寿命
  • 埃や汚れが堆積しても磁場の検知可能なので、光学式スイッチよりも有利
  • 磁石の有無で非接触にて動作する為、防水設計が可能でメンテナンスも容易

以下で簡単にボールねじについて説明します (詳細は『エンコーダー基礎知識 ♯02 エンコーダーの種類と仕組み』のコラムを確認ください) 。

ボールねじは、モーターに取り付けたスクリューシャフトが回転し、ナットが前後運動することで回転運動を直線運動に変換する装置です。モーターに付属のエンコーダーでナットの移動距離を精密に測定できるので、産業機器などに採用されています。またナットの原点を検出することで故障や経年劣化による位置精度の悪化を防ぐことができます。さらに実際に故障や経年劣化が起こった場合に、ナットがオーバーランし衝突するのを防ぐため、終点検知が搭載されています。

ボールねじの位置検知センサーの主要構成部材は、モーター、スクリューシャフト、ナット、磁石、ホール IC2 個 (と軸受け、ガイドレール、土台)です。

図 1a にボールねじの原点検知  (1)、 および終点検知  (2)  の例を示します。

ボールねじの例 図 1a. ボールねじの例
ホール IC A の動作ダイアグラム 図 1b. ホール IC A の動作ダイアグラム
ホール IC B の動作ダイアグラム 図 1c. ホール IC B の動作ダイアグラム

ナット側に磁石、固定台側にホール IC を 2 つ、原点と終点位置に設置します。

ホールIC Aはナットが原点位置にある時 ( (1) の時) は、印加される磁石からの磁場が Bop を超えている為、出力は Low となり、原点位置を把握することができます (図 1b)。

スクリューシャフトの回転により、ナットが動いて終点位置に達すると ( (2) の時)、ホール IC B が Bop を超えることになり、出力が Low となります (図 1c)。

産業機器は、高精度位置検知が必要なアプリや高速動作するアプリが多いため、高速応答可能な AKM の EW 製品が推奨されます。

(2) 燃料計・液面計センサー

燃料計、液面計センサーは、液体燃料や貯水タンクの残量が所定の設定された量になったことを知らせるセンサーです。機械的に非接触で、電気回路をタンクの外側に設置出来る為、可燃性の液体でも使えるメリットがあります。一般的には、タンクの液面の上限  (満杯)  や、下限  (空)  検出として使われます。応用例として、ホール IC をアレイ状に並べれば液面の高さを多段階で検出できる機構も可能です。

以下に、液面の下限位置検知の例を示します。液面計センサ―の主要構成部材は、磁石、ホール IC、フロートです。

磁石の S 極がホール IC に向くようにフロートに取り付けます。そして、検出したい液面の高さにホール IC を配置します (図 2a の (1) 参照) 。

タンクに十分に液体があるときは、磁石とホール IC が離れているため磁場が十分に小さく、ホール IC は High の状態です。経時的に液体が減っていき、磁石がホール IC の位置まで下がりホール IC に印加される磁場が Bop 以上になると、ホール IC の出力は Low に変化します。(図 2b)

この出力の変化を使い、液体の残量を検出することができます。

液面レベル検知の例 図 2a. 液面レベル検知の例
ホール IC の動作ダイアグラム 図 2b. ホール IC の動作ダイアグラム