システムの小型化

#01 では、電流センサー IC : Currentier がどのように「システム (筐体・基板) の小型化」に貢献できるのかを説明します。

電流センサー

近年、工場のオートメーション化 (FA) が進む中で、汎用インバーターや、AC サーボモータードライブ、ロボット向けコントローラー等、多くの制御機器が工場などの施設に導入されています。

これら制御機器にとって、いかに筐体サイズを小さくし工場施設の面積効率アップにつなげられるかが大きな課題となります。そこで注目されたのが、コアレス電流センサー IC を使用することによるモーターの電流制御用電流検出素子および周辺回路の小型化です。

Currentier

Currentier は、以下の 3 つの理由にて機器の筐体小型化に寄与することができます:

  1.  低発熱による小型化
  2.  部品点数削減による小型化、電流センサー自体の小型化
  3.  キャリア周波数の高速化による小型化

1. 低発熱による小型化

インバーター制御やベクトル制御では、シャント / セメント抵抗+絶縁 ADC / 絶縁アンプ (以下、シャント方式) という電流検出方法が主流となっています。Currentier はシャント方式に比べて一次導体の抵抗値が低いため、発熱抑制・放熱面積削減を可能とし、大幅にサイズを低減することができます。

シャント方式は、抵抗から電圧を作る方式のため、出力電圧の大きさを確保するためにある程度抵抗の値を大きくすることが不可欠です。そのため、抵抗体の耐熱温度を上げることができても、発熱自体を抑制することは原理的に困難となります。その一方でコアレス電流センサーは、一次導体に流れた電流により発生する磁場を磁気センサーを用いて電圧に変換する方式のため、シャント方式と違って一次導体の抵抗値を大きくする必要がありません。

その中でも特に Currentier は、高感度な磁気センサー (化合物ホール素子) を用いることによって比較的弱い磁場にも効率的に電圧変換ができるため、一般的なコアレス電流センサーよりも一次導体を太くしてさらに低抵抗にでき、発熱を抑制することができます。

下図は、Currentier と、シャント抵抗および一般的なコアレス電流センサーの発熱量を比較した熱画像です。(図1)

図1 Currentier とシャント抵抗との比較 図1 Currentier とシャント抵抗との比較
図2 Currentier と一般的なコアレス電流センサー IC との比較 図2 Currentier と一般的なコアレス電流センサー IC との比較

熱画像からそれぞれの発熱量に差があるのは一目瞭然ですが、40A を 10 分間通電した場合、Currentier はシャント方式に対しては約 50 ℃、一般的なコアレス電流センサーに対しては、約 20 ℃ 発熱が小さくなる結果となっています。このように、Currentier はシャント方式と比較して低抵抗、低発熱であることから放熱面積を大きく削減することができます。例えば定格電流 30 Arms 電流検出範囲 85 App の場合、シャント方式で使用する抵抗値は約 2.4 mΩ となります。 (絶縁アンプの入力電圧を 200 mV とした場合。) この時、発熱量は約 2.1 W となります。

一方、Currentier CZ37 シリーズの場合、電流量によらず抵抗値は 0.27 mΩ であり、発熱量は約 0.24 W となります。一般的なインバーターの相電流検知に多い電流検知 2 個使いを前提として、この発熱量を温度上昇量 Δ 20 ℃に抑えるには、

 シャント方式:56 cm^2 (1 辺 ≒ 7.5 cm) が 2 か所

 CZ37 シリーズ:6.4 cm^2 (1 辺 ≒ 2.5 cm) が 2 か所

となり、面積削減率 約 90 % を実現することができます。 (自然対流を想定した場合の計算結果) 

図3 シャント抵抗+絶縁 Amp の例 図3 シャント抵抗+絶縁 Amp の例
図4 CZ37 シリーズを使用した場合の例 図4 CZ37 シリーズを使用した場合の例

2. 部品点数削減による小型化、電流センサー自体の小型化

Currentier は、シャント方式と異なり複雑な絶縁電源の引き回しが不要です。そのため、周辺部品を削減することが可能となり、基板サイズを低減できます。(図 5) (図 6) 

図5 シャント抵抗を使用した場合の回路図 図5 シャント抵抗を使用した場合の回路図
図6 Currentier を使用した場合の回路図 図6 Currentier を使用した場合の回路図

また Currentier 自体が小型なことから、シャント抵抗と同様に従来から使用されているコア付き電流センサーと比較しても、大幅に高さ・実装面積を小さくすることができます。(図 7) 

図7 比較対象品 図7 比較対象品
投影面積比較 投影面積比較
高さ比較 高さ比較

3. キャリア周波数の高速化による小型化

Currentier は高速周波数に対応しているため、PFC 回路においてトランス・コンデンサー・インダクターのサイズを小さくでき、筐体サイズ低減に貢献できます。(図 8) 

図8 電源装置ブロック図概略 図8 電源装置ブロック図概略

一般的なコアレス電流センサーでは感度の低い Si ホール素子が使われているため、後段の増幅率を高くする必要があります。

周波数帯域を広くとってしまうとノイズまで大きくなってしまうため、その対策のためにどうしても周波数帯域を狭くとらざるを得ず、応答速度が遅くなります。それに対して Currentier は、ホール素子自体の感度が高く後段の増幅率を低くできるため、広い帯域幅を確保することが可能となり 、Si ホール素子を用いた電流センサーに比べて速い応答速度を実現し、高速周波数に追随ができます (図 9) 。

スイッチング電源の PFC 回路に使われているトランス・インダクター・コンデンサーは低速なスイッチング周波数でも使えるよう、それぞれサイズを大きくせざるを得ず、筐体の中でも大きな面積を占める状態でした。高速周波数に追随できる電流センサーを使用してスイッチング周波数を高速にできれば、トランスは小型でも磁気飽和しにくくなり、また、インダクターは小さいインダクタンス L でも、コンデンサーは小さい電気容量 C でも、それぞれ十分なインピーダンスが出ます。これにより、スイッチング電源の筐体の小型化を実現することができます。

図9 CZ37 シリーズと一般的なコアレス電流センサー IC の応答速度比較 図9 CZ37 シリーズと一般的なコアレス電流センサー IC の応答速度比較

まとめ

AKMのコアレス電流センサーCurrentierは、下記の実現により、システム (筐体・基板) の小型化を実現します。

・低発熱による基板の小型化

・部品点数の削減&電流センサー自体の小型化

・キャリア周波数の高速化による周辺部品の小型化

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