電流センサーの種類と特長

電流センサー

現在、産業用機器をはじめとする多くのアプリケーションで電流センサーが使用されています。

産業用機器においては電流検知に絶縁を求められることが多くあり、その方法としてシャント抵抗 + 絶縁アンプ / 絶縁 ADC 方式、コア付き電流センサー方式、コアレス電流センサー方式 (電流センサー IC) があります。

本ページでは、各電流検知方式の概要とそのメリット・デメリットを説明します。

1. 電流検知における方式

電流検知方式は、シャント抵抗 + 絶縁アンプ / 絶縁 ADC 方式、コア付電流センサー方式、コアレス電流センサー方式 (電流センサー IC) の 3つに分類することができます。

下記の表は各方式のそれぞれの特徴を表にまとめたものです。各方式のメリット・デメリットについては、各項で説明していきます。

Table 図 1. 比較表

* 1 セメント抵抗使用時には "×" となります。

*2 二次側だけでなく、一次側にも IC 駆動による電流消費があります。

*3 20A をこえる大電流時には、放熱の為の基板コストやファンコストの低減等のコストメリットがあり、"〇" となります。

電流検知方式の選び方

・シャント抵抗 + 絶縁アンプ / 絶縁 ADC 方式は、外乱磁場が多い環境において発熱が問題にならないレベル (10A 以下) の微小電流を高精度に検知するのに向いています。

・フラックスゲートは、電流検知技術の中で最も高精度が求められる用途に適しています。

・一般的なコアレス電流センサーは、小型機器において小サイズが求められる用途、検出精度よりも低コストが求められる用途に適しています。

・AKM のコアレス電流センサー IC は、一般的なコアレス電流センサーはもちろん、従来のコア付き電流センサー (オープンループ、クローズドループ) と比較しても、どの項目においても遜色ない性能を発揮します。

2. シャント抵抗 + 絶縁アンプ / 絶縁 ADC 方式

シャント抵抗 + 絶縁アンプ / 絶縁 ADC 方式とは、既知の抵抗体に測定したい電流を流しその抵抗体で降下する電圧値から電流値を算出する方法で、絶縁を後段の絶縁アンプまたは ADC で取る必要があります。

この方式は電流検出方式で最もメジャーであり、発熱を気にする必要のない小さな電流を検出する場合に適しています。しかし、数十アンペア以上の大電流が流れる用途では、以下のようなデメリットが顕在化します。

メリット

  • 電流検出方式として最もメジャーな方式であり、各社に技術が蓄積されている。

デメリット

  • 一次側(高圧側)に、絶縁電源、バイポーラ電源等の部品点数が多いことで、設計の手間がかかる。
  • 発熱は抵抗値に比例するため、他方式に比べ数倍~数十倍の発熱となり、熱設計が困難となる。
  • 部品点数が多いことで配線の引き回しが難しく、実装面積が増える。
Schematic Diagram of Shunt Method 図 2. シャント方式の模式図

上記シャント抵抗 + 絶縁アンプ / 絶縁 ADC 方式のデメリットを解決する方法として、磁気方式の ”電流センサー” があります。

3. 磁気式電流センサー

磁気式電流センサーとは、測定したい電流が電流線の周囲に作る磁場を磁気センサーによって検知することで電流量を検出する方法です。

磁気式電流センサーはシャント方式と異なり、センサー内部で絶縁ができる構成のため、後段に絶縁アンプや絶縁 ADC を設置する必要がありません。

また、電流量によって抵抗値を変える必要がないので、「比較的抵抗値の低い抵抗体に電流を流し電流を検出することでシャント方式のデメリットを解決できる」ソリューションとして注目を集めています。

3-1. コア付き電流センサー

磁気式電流センサーの中でも、電流線の周囲の磁場を磁気コアで集めて検知するものをコア付き電流センサーと呼びます。

コア付電流センサーは、1. オープンループ型、2. クローズドループ型、3. フラックスゲート型 の3つのカテゴリーに分類することができます。

3つのカテゴリーの比較

 価格:  安価 オープンループ < クローズドループ < フラックスゲート 高価

 精度:  低い オープンループ < クローズドループ < フラックスゲート 高い

共通のメリット

  • 一次導体の抵抗値が小さく、発熱が小さい。
  • 部品点数が少ない (他の部品が不要) 。

共通のデメリット

  • 磁気コア材があるため、低背化が困難で設置場所に制約がある。
  • 磁気コアは原理的に磁気ヒステリシスを持つため、大きな磁場の印加前後で零電流時のセンサー出力 (オフセット電圧) が変化し、誤差の要因となる。
Schematic Diagram of Cored Current Sensors 図 3. コア付き電流センサーの模式図

フラックスゲート方式は磁気コアの間にプローブコイルがあり、そのプローブコイルを高周波の交流でドライブし、センサーとしています。

そのため、温度によらずオフセットがほとんど原理的に発生しない点がフラックスゲート方式独自のメリットです。

ただしプローブコイルがある構成上、構造が複雑かつ高価であり、またフィードバック電流が必要なため消費電流が大きくなるというデメリットを有します。

上記のようなコア付電流センサーのデメリットを解決できる方法として考案されたのが、”コアレス電流センサー” です。

3-2. コアレス電流センサー

コアレス電流センサーとは、一次導体に電流を流し発生する磁界を磁気コアを介さず直接ホール素子で電圧として取り出し、IC で増幅・補正して出力するという非常にシンプルな構成の電流センサーです。

コア付電流センサーのメリットを維持したまま、磁気コアによる課題を解決できるセンサーとして開発され、2010年代前半からサイズの小型化を重要視しているアプリケーションで採用が進んでいます。

3-2-1. 一般的なコアレス電流センサー

シリコンのホール素子は低感度であり、それを補うため一次導体を細くし発生磁界を大きくしたり、補正 IC のゲインを上げたりといった対策が必要となっています。

その結果、下記のメリット・デメリットがあります。

メリット

  • 磁気コアがないため低背化が可能。内部構造が簡易で低コスト化しやすい。
  • 磁気コアがないため磁気ヒステリシス誤差がない。
  • 消費電流が小さい。

デメリット

  • 一次導体を細くしたことで抵抗値が高くなり発熱しやすい。大電流の測定が不可能。
  • ホール素子の感度が低く、十分な分解能を得るために周波数帯域を狭く設計。そのため応答速度が遅くなる。
  • 補正 IC のゲインを上げると、ホール素子が持つオフセットも増幅されるため、高精度化が困難。
Diagram of a Coreless Current Sensor 図 4. コアレス電流センサーの模式図

3-2-2. AKM のコアレス電流センサー

AKM のコアレス電流センサーは、上述の一般的なコアレス電流センサーが有するデメリットを AKM の独自技術で解決しました。

メリット

  • 一次導体が低抵抗のため低発熱であることに加え、±5A~±180A もの広い測定電流レンジに対応。
  • 感度の高い化合物半導体ホール素子をセンサーに使うことで、帯域を狭くしなくても高分解能となります。
  • そのため、帯域を広くでき、かつ高分解能特性を実現しています。
  • ホール素子の感度が高い分、補正 IC のゲインをそれほど上げる必要がなく、低オフセット・高精度を実現。

デメリット

  • 一般的なコアレス電流センサーに比べて若干コストが高い。

関連情報

AKM のコアレス電流センサー IC ”Currentier" の情報は、下記をご覧ください。

AKM のコアレス電流センサー IC "Currentier"

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