次世代パワーデバイス ( SiC / GaN )

電流センサー

本ページでは、SiC や GaN を用いた次世代パワーデバイス用途において、一般的に用いられている

1.トーテムポール PFC 回路

2.位相シフト DCDC 回路

の電流検出に最適な AKM の推奨製品をその優位性とともに提案します。

次世代パワーデバイス

Si パワーデバイスの課題

パワーデバイスとは、電力システムに用いられる半導体素子で、現在は Si-IGBT や Si-MOSFET が多く用いられています。パワーデバイスのスイッチング動作を高周波化することにより、コイルやトランスなどの受動部品を小さくでき、「システムの小型化」を実現できます。しかし、Si-MOSFET や Si-IGBT では、高周波化すると、スイッチング動作時の損失が大きくなってしまい、「システムの高効率化」が実現できません。このことから、Si-IGBT や Si-MOSFET を用いた電力システムでは、「システムの小型化」と「システムの高効率化」の両立が困難でした。

図1 パワーデバイス高周波化(Si→SiC、GaN)によるサイズとスイッチング損失の変化 図1 パワーデバイス高周波化(Si→SiC、GaN)によるサイズとスイッチング損失の変化

次世代パワーデバイスのメリット

一方、次世代パワーデバイスの SiC-MOSFET や GaN-MOSFET は、高周波スイッチング動作時の損失が非常に低いため、システムの変換効率を悪化させることなく受動部品の小型化が可能になります。そのため、次世代パワーデバイスとして SiC-MOSFET や GaN-MOSFET が注目されており、 EV やパッケージエアコン( PAC )、サーバー用電源、産業機器用電源、UPS(無停電電源)、太陽光パワーコンディショナー等、幅広い用途で使われ始めています。図2は Si, SiC, GaN を用いたパワーデバイスの電力容量とスイッチング周波数を比較し、それらを用いた電力システムを有する代表的なアプリケーションを示しています。
パワーデバイスが Si から、SiC や GaN に変遷することで電力容量がより大きく、スイッチング周波数がより高い範囲にも対応できるようになります。
AKM の電流センサーは小型ながら 60Arms に対応、なおかつ高速応答のため、SiC や GaN を用いたアプリケーションの電流検出に適しています。
今後さらなる大電流化、高帯域化を進め、SiC / GaN のアプリケーションの広がりにも対応していきます。以下では、代表的なアプリケーションで主流となる、「トーテムポール PFC 回路」と「位相シフト DCDC 回路」について、その特長と最適な電流検出方式の選び方をご説明しています。

図2 次世代パワーデバイスの主要アプリケーションにおける電力容量・スイッチング周波数の比較 図2 次世代パワーデバイスの主要アプリケーションにおける電力容量・スイッチング周波数の比較

トーテムポール PFC 回路

*PFC とは、Power Factor Correction を略したもので、力率改善のことを指します。

高調波電流抑制規定の制定にともない、スイッチング電源などに内蔵されています。従来は、ダイオードブリッジを用いた PFC 回路が主流でしたが、ダイオードブリッジ部の電力損失が大きく「システムの高効率化」が困難でした。この課題を解決するために、ダイオードブリッジの代わりに電力損失の小さいパワーデバイスを用いた「トーテムポール PFC 回路」が注目されています。( 図 3 ) 高周波時でも電力損失の小さい次世代パワーデバイスを用いることで、「システムの高効率化」と「システムの小型化」が両立できます。以下では、トーテムポール PFC 回路の特長を最大限活かすために電流検出部に求められる特性についてご紹介します。

図3 トーテムポール PFC 回路 図3 トーテムポール PFC 回路

トーテムポール PFC 回路の電流検出部では下記 5 つの項目が重要となります。

  1. 絶縁設計
  2. 零電流測定精度
  3. 応答速度
  4. 発熱
  5. サイズ/面積

 

表 1は、上記の 5 つの項目についてAKMの電流センサー IC、カレントトランス(以下、CT )、シャント+絶縁アンプを比較したものです。AKM の電流センサー IC は、5 つの重要な項目を満たすことのできる唯一の電流検出方式です。一方、CT や、シャント+絶縁アンプの構成ではそれぞれ課題があります。下記では、各項目が重要な理由と3 つの電流検出方式のメリット・デメリットについて説明します。

表1 電流検出方式の比較

表1 電流検出方式の比較

1. 絶縁設計

従来の PFC 回路では、グラウンド ( 以下、GND ) に流れる電流を検出する方法がありました。しかし、トーテムポール PFC 回路ではスイッチング素子の ON / OFF の組み合わせ次第で、GND を流れない電流経路 ( 図 3  の青線を通る経路 ) が存在するため、AC 電源のハイサイドで電流を検出する必要があります。そのため、電流検出部では一次側と二次側の間で絶縁を取る必要があります。
シャント抵抗 + 絶縁アンプでは、一次側及び二次側に絶縁アンプを駆動する電源が必要となり、回路構成が複雑になります。
AKM の電流センサー IC やカレントトランスは一次側の電源が不要なため、絶縁設計が非常に容易です。

2. 零電流測定精度

トーテムポール PFC 回路では、入力電流の極性切り替えのタイミングを正確に検出する必要があります。
そのため、電流検出部には、零電流測定精度が求められます。CT は磁気ヒステリシスの影響を受けるため、この零電流測定精度が課題になります。
AKM の電流センサー IC は、磁気ヒステリシスをもたないため、零電流測定精度が高いという特長があります。

3. 応答速度

次世代パワーデバイスを用いる場合には短絡耐量が短いため、過電流を瞬時に検知して保護する必要があります。そのため、電流検出部には、速い応答速度が必要になります。CT で速い応答速度を実現するためには、CT のサイズが大きくなるという課題があります。シャント+絶縁アンプは、応答速度 1 μsec 以上のものが一般的で、短絡耐量の短い次世代パワーデバイスの保護には向いていません。AKM の電流センサー IC は、小型でありながら、応答速度 1 μsec 以下を実現しており、次世代パワーデバイスの過電流検知に最適です。

4. 発熱

電流検出部の発熱が大きい場合には、発熱対策として放熱面積を広く確保する必要があり、「システムの小型化」の観点で問題になります。シャント抵抗+絶縁アンプの構成では、シャント抵抗に電流が流れることによって大きな発熱が発生してしまいます。AKM の電流センサー IC は、電流が流れる一次導体の抵抗値が 0.27mΩ と小さいため、発熱を抑え( 3mΩのシャント抵抗と比較すると、発熱は約 1/10 )、システムの小型化にも貢献できます。

5. サイズ / 面積

部品のサイズや面積が大きい場合には、「システムの小型化」が困難になります。

CT で速い応答速度を実現するためには、CT のサイズが大きくなるという課題があります。シャント + 絶縁アンプは、一次側及び二次側の電源や入力フィルタ等、様々な周辺部品が必要で、実装面積が大きくなってしまいます。AKMの電流センサー IC は、パッケージのサイズが小さく、シャント + 絶縁アンプの構成で挙げた周辺部品が不要なため、「システムの小型化」に最適な電流検出方式です。

詳しくはこちらをご覧ください。

モータードライブシステムは、内側から順に、電流を制御する電流制御系、速度を制御する速度制御系、位置を制御する位置制御系からなる、制御ループで構成されています。車のように速度を制御するだけの場合は速度制御系までで構成され、ロボットのように目標位置まで移動させるような場合は位置制御系までの構成が必要となります。

電流制御系はモーター制御システムの最も内側に位置するため、外側の制御系にも大きな影響を及ぼし、そのため最も高速・高精度に設計されることが重要です。

電流制御系は加速度に相当するトルクを制御します。トルクはモーターに流れる電流量に比例するため、モーターにかかる負荷に比例して電流量を調整します。

推奨デバイス

* 製品の選択は下記の セレクションテーブル をご覧ください。

位相シフト DCDC 回路

位相シフト DCDC 回路は、DCDC 回路の中でも変換効率の高い回路です(図 4 参照)。位相シフト DCDC 回路は、電力損失の小さい次世代パワーデバイスを用いることで、トーテムポール PFC 回路と同様に高周波化による受動部品(主にトランス)の小型化が原理上可能です。トランスの小型化を進める上で問題となる磁気飽和を避けるための方法として、磁気飽和点の直前まで電流が流れるように制御する”ピーク電流制御”が知られています。この方式は、ピーク電流を遅延なく、精度良く測定することが重要です。この電流検出方式は主に CT が使われますが、今後さらに高周波化によってトランスの小型化を進めるためには 2 つの課題があります。

図4 位相シフト DCDC 回路 図4 位相シフト DCDC 回路

1 つ目の課題は、CT の帯域です。ピーク電流を遅延なく検出するためには、広い帯域が必要ですが、CT で広い帯域を実現するためにはサイズを大きくする必要があります。

2 つ目の課題は、CT の測定精度です。測定精度とは、零電流電圧、非線形性、電流感度を合わせた精度のことです。CT は磁気ヒステリシスなどの影響を受けるため、測定精度が悪く、ピーク電流を正確に検出できません。トランスの小型化を進めると,磁気飽和点は低くなるため、より正確にピーク電流を測定する必要があります。CT の測定精度ではそれが困難になります。

 

これに対して、AKM の電流センサー IC は、

  • 帯域が広い
  • 精度が良い

という特長があります。

AKM の電流センサー IC は、帯域が広く、かつ小型パッケージのため、高周波時でも、CT のようなサイズ面の課題がありません。また、精度が良いため、正確にピーク電流を検出することができ、高周波時でもトランスの磁気飽和を避けて小型化することができます。

 

AKM の電流センサー IC( Currentier )の詳細は こちらをご覧ください。

セレクションテーブル

Current 
Sensor 
Type
Package Supply
Voltage
Output
Voltage
Effective
Current
Measurement
Range
Bipolar /
Unipolar
Ratiometric/
Non-Ratiometric
Creepage
Clearance
Working
Voltage *
Product 
Name
Product
Series
Part
Status
(V) (V) (Arms) (Apeak) (mm) (Vrms)
Coreless SOP 5.0 5.0 100 ± 115 to ± 225 Bipolar Retiometric ≧ 8.0 1118 CZ375x CZ375 シリーズ MP
60 ± 5.3 to ± 180
CZ370x CZ370 シリーズ
CZ372 シリーズ
MP
0 to 345.2 Unipolar CZ372x 
3.0 50 ± 11.6 to ± 166.6 Bipolar Non-Ratiometric CZ3AGx CZ3A シリーズ MP
3.3 3.3 ± 12.9 to ± 129.1 CZ3A0x