Currentier (カレンティア) とは ?
Currentier とは、AKM のコアレス電流センサー IC のブランド名です。
電流を意味する "Current" と、先駆者を意味する "Frontier" を合わせた造語です。
* Currentier は、旭化成エレクトロニクス株式会社の商標です。
電流センサー
1. 概要 : Currentier とは ?
"Currentier" (カレンティア) とは、AKM のコアレス電流センサー IC のブランド名です。電流を意味する "Current" と、先駆者を意味する "Frontier" を合わせた造語です。
"小型" が魅力のコアレス電流センサー IC の中でも、AKM のコアレス電流センサー IC "Currentier" は、超低発熱・高分解能・高速応答・高精度といった多くの魅力を持った製品です。
1. システム (筐体 / 基板) の小型化
2. 熱設計の容易化
3. 設計工数の削減
4. 安全機能の実現
5. システム効率の改善と精密制御に貢献
2. Currentier のホール素子
同じ名前の「コアレス電流センサー IC 」であっても、一般的なコアレス電流センサー IC と AKM のコアレス電流センサー IC は性能が大きく異なります。それを支えているのが、圧倒的な技術力を持ったホール素子です。
一般的なシリコン (Si) のホール素子と AKM の化合物半導体ホール素子は、「磁場を検出する」という役割は同じですがその性能が大きく異なります。ホール素子の出力電圧の大きさを示す「ホール効果」は、材料によって数 10 倍も変化することが知られています。
AKM は、このホール素子というニッチな業界で約 40 年の歴史を持つメーカーであり、多くの特許も取得しています。この高感度な化合物半導体ホール素子を用いて、コアレス電流センサー IC を製造しています。
* 特許登録番号 第 4855189 号
* 特許登録番号 第 6263804 号 他
この高感度な化合物半導体ホール素子という特長の活かし方は主に 2 種類あります。
3. Currentier のパッケージ技術
Currentier のパッケージの特長は 2 点あり、大電流対応と高い絶縁性が挙げられます。
3-1. 低発熱・大電流 対応技術
低発熱・大電流対応は、高感度なホール素子を活かすパッケージ技術で実現しています。
AKM のホール素子は、一般的な Si のホール素子と比較して約 30 倍の高感度特性を持ちます。そのため、測定電流Iが作る磁場 B が多少小さくても十分な信号出力となります。磁場 B が多少小さくても良い事から、一次導体に流れる電流密度を下げる事ができ、結果として一次導体の断面積を太くし抵抗値を劇的に下げることができます。
その結果、一般的製品の一次導体抵抗~ 0.8 mΩ 程度に対し、Currentier の一次導体抵抗は 0.27 mΩ と 1/3 程度の大きさとなっています。発熱量は一次導体抵抗値に比例するため、同じ電流量を流した時に、一般的コアレス電流センサーよりも発熱量を 1/3 程度まで抑制することができ、システム (筐体・基板) の小型化に貢献します。
図 1 は、Currentier に 40A を印加した時の発熱結果、図 2 は一般的なコアレス電流センサーに 40A を印加した時の発熱結果となります。発熱量が抑えられたことで、大電流にも対応できる製品となっています。
この大電流対応によって、大電流 (± 100 App 以上) から小電流 (± 5 App) まで同一パッケージでの測定が可能となりました。結果として、容量が異なる製品においても同一の電流センサーラインアップを使うことが可能となり、設計検証や部品認定の工数を削減できます。
3-2. 高絶縁 対応技術
次に、高い絶縁性はパッケージ構造で実現しています。
AKM のコアレス電流センサー IC Currentier と一般的なコアレス電流センサー IC は、内部構造が大きく異なります。
図 3 が Currentier のパッケージの模式図 (透視図 / 断面図)
図 4 が一般的なコアレス電流センサー IC のパッケージの模式図 (透視図 / 断面図) となります。
Currentier の場合、高電圧側となる一次導体と低電圧側となる ASIC・ホール素子が物理的に接しておらず、その間を絶縁体であるパッケージ樹脂で充填しています。この構造により、パッケージ内部に沿面を持たない、高い絶縁性を実現しています。
一方で一般的なコアレス電流センサー IC の場合、高電圧側となる一次導体の上に絶縁フィルムを載せ、その上に低電圧側となる ASIC を置く構造となっています。この構造では、一次導体 (高電圧側) - 絶縁フィルム - ASIC (低電圧側) の経路で沿面が存在します。よって、絶縁フィルムとパッケージ樹脂間に隙間があると絶縁破壊が起きやすい状態となります。そのため、経年劣化含めて十分な密着性を確認しておく必要がある構造です。
Currentier は、一般的なコアレス電流センサー IC の様な懸念が無く、パッケージ外部で沿面・空間距離を 8 mm以上とることで、400V 系の強化絶縁を実現しています。このパッケージ技術を活用して絶縁を確保する技術は、パッケージ技術 / ホール素子技術を併せ持つ AKM ならではの技術であり、特許* も取得しています。
* 特許登録番号 第 6415148 号 他
4. Currentier の ASIC 技術
ASIC の役割は、一般的なコアレス電流センサー IC も AKM の Currentier も共通で、磁気センサー信号の増幅・電流感度の調整・零電流電圧の調整・各種温度補正の実施です。Currentier の ASIC は、高速応答と高分解能の 2 つの観点で特長を持っています。
高速応答は、ホール素子の高感度特性を活かした ASIC により実現しています。
まず、磁場の大きさが同じであれば、ホール素子が高感度であるほど ASIC に入るホール素子の信号は大きくなります。そのため ASIC で実現するアンプの増幅率は低く、信号帯域の広帯域化が実現できます。信号帯域が広いほど、電流センサーは高速応答となります。過電流検知等の高速応答が必須となる使用方法にも適しており、製品シリーズ (例:CZ3A シリーズ) によっては、図 5 の IC ブロック図の通り、IC 内にコンパレータ機能を内蔵、外部にコンパレータを置く必要もありません。
さらに、今後次世代パワーデバイスが広がりスイッチング周波数が高速化していった際には、Currentier の高速応答が必要となる機会が増えてきます。また、各種温度特性の高精度な補正は、化合物ホール素子の特性を知り尽くした AKM だからこそできる回路技術がいろいろ搭載されており、クローズドループ型やシャント抵抗+絶縁アンプにも匹敵する高精度な電流検出を実現しています。結果として、モーターのより効率的な制御等に寄与し、システム効率の改善と精密な制御に貢献しています。
* 特許登録番号 第 5385490 号
* 特許登録番号 第 5795383 号
* 特許登録番号 第 6144515 号 他
5. まとめ
一般的なコアレス電流センサー IC は、発熱が小さい、直流・交流の測定が可能、磁気ヒステリシスが無い、一次側絶縁電源が不要、といった多くのメリットを持っている一方で、分解能が低い、応答速度が遅い、といったデメリットも内在していました。
このコアレス電流センサー IC のデメリットに対し、AKM のコアレス電流センサー IC "Currentier" は、高感度な化合物半導体ホール素子・パッケージ・ ASIC 技術を組み合わせることでデメリットを克服し、超低発熱・高分解能・高速応答・高精度といった多くの魅力を持った製品となっています。
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