コアレス電流センサー IC とは ?

電流センサーとは、基板や配線に流れる電流を主に磁気センサーで検出し、その磁気センサーの出力を用いて電流量に比例した信号を生成するデバイスです。その中で、磁気コアがない方式をコアレス電流センサー IC といいます。

電流センサー

1 .   概要 : コアレス電流センサー IC とは ?

このページではコアレス電流センサー IC とは何か?そして、その原理や特長を解説しています。
原理や特長を理解することで、使い方や使ったときのメリットをより深く理解いただけると考えています。
コアレス電流センサー IC の中でも、 AKM のコアレス電流センサー IC : Currentier だけが持つ特長に関しては、"Currentier とは ?" で紹介しています。

電流センサーとは基板や配線に流れる電流を主に磁気センサーで検出し、その磁気センサーの出力を用いて電流量に比例した信号を生成するデバイスです。その中で、磁気コアがない方式をコアレス電流センサー IC と言います ( 磁気コアがない = コアレス ) 。コア付電流センサー等、他の電流検出方法については、"電流センサーの種類と特長" にて詳しく紹介しています。

図 1 は、一般的なコアレス電流センサー IC の内部構造図です。
コアレス電流センサー IC は、 3 つの構成要素で成り立っています。

  1. パッケージ (一次導体を含む)
  2. 磁気センサー (主にホール素子)
  3. ASIC

コアレス電流センサー IC は、「 一次導体に電流を流し、発生する磁場をホール素子で電圧として取り出し、 ASIC で増幅・補正して出力する 」という非常にシンプルな原理で出来ております。

以下の 2 .~ 4 . にて、3 つの構成要素の役割を詳しく説明します。

図 1 一般的なコアレス電流センサー IC パッケージ模式図 ( 透視図、断面図 ) 図 1 一般的なコアレス電流センサー IC パッケージ模式図 ( 透視図、断面図 )

2 . パッケージの役割

コアレス電流センサー IC におけるパッケージの役割は、磁場の発生と絶縁性の確保の 2 つがあります。

2 - 1 .  磁場の発生

磁場の発生に関わるのが一次導体です。一次導体は測定電流の経路であり、磁場発生部としての役割を持っています。測定電流は、プリント基板から一次導体に流れこみ、一次導体周囲に電流量に比例した磁場 B を発生させます。一次導体はパッケージのリードフレームをそのまま利用して作られています。

電流センサー以外の主要な電流検出方式としてシャント抵抗 + 絶縁方式がありますが、原理的に低発熱が困難という課題があります。これはこの方式が I → V 変換による方法であり、出力電圧 V の大きさを確保するために抵抗値 R の大きさが不可欠なためです。

一方、コアレス電流センサー IC では一次導体はただの電流経路であり、磁場 B が出来ればよいため抵抗値を十分に小さくすることが可能です。電力 P は抵抗値 R に比例する為、抵抗値 R の値が小さいコアレス電流センサー IC は低発熱となります。発熱を抑える事で、システム ( 筐体 / 基板 ) の小型化を実現することが出来ます。

上記の通りコアレス電流センサー IC は低発熱ですが、その中でも特に、AKM ” Currentier ” の一次導体抵抗値は小さく、発熱を抑制しシステム ( 筐体 / 基板 ) の小型化を実現します。これについては、 " Currentier とは? " で紹介しています。

Figure2. Schematic of general coreless current sensor's package (See through view / Cross sectional view)
図 2  一般的なコアレス電流センサー IC パッケージ模式図 ( 透視図 / 断面図 ) 図 2 一般的なコアレス電流センサー IC パッケージ模式図 ( 透視図 / 断面図 )

2 - 2 . 絶縁性の確保

コアレス電流センサー IC のもう 1 つのメリットとして、容易に絶縁性を確保可能という事が挙げられます。図 2 に一般的なコアレス電流センサー IC のパッケージの模式図 ( 透視図 / 断面図 ) を示します。

ここで示す一般的なコアレス電流センサー IC と、AKM のコアレス電流センサー IC Currentier は内部構造が大きく異なります。その差異や効果は、"Currentier とは?" で紹介します。

一般的なコアレス電流センサー IC では、一次導体の上に絶縁フィルムを置き、その上に ASIC を置いた構造となっています。パッケージ内部においては、この絶縁フィルムによって、一次側と二次側の絶縁を確保しています。また、パッケージ外部においては、一次導体と二次側の端子の沿面・空間距離を確保することで、所定の絶縁性能を実現しています。

3 . 磁気センサーの役割

磁気センサーは、一次導体で発生した磁場を測定する役割を持っています。磁気センサーとしては、主にホール素子が用いられます。これはホール効果を利用した素子で、磁場に比例した電圧を出力します。一次導体に流れる電流が作る磁場は、電流に対して比例関係にあります。そのため、ホール素子の出力と一次導体に流れる電流の間にも比例関係が成り立ちます。

ホール素子が反応するのは磁場であり非接触のため、高電圧な一次導体と電流センサー出力の間に絶縁を取ることが可能です。一般的なコアレス電流センサー IC の場合、2 - 2 . で示した通り、絶縁フィルムによって絶縁を確保しています。

このホール素子は、シリコン ( Si ) で作る場合と化合物半導体で作る場合の 2 種類があり、AKM 以外のコアレス電流センサー IC のホール素子は、ASIC に内蔵され Si で作られています。
ホール効果の大きさは、ホール素子の材料の電子移動度で決まりますが、Si の電子移動度は 1450 ( cm2 / Vs ) 程度です。この値は、AKM のコアレス電流センサー IC のホール素子 InAs の電子移動度と比較すると、1 / 24 程度とかなり小さい値となっており、分解能の観点で課題があります ( 表1 ) 。

表 1 ホール素子材料と電子移動度 表 1 ホール素子材料と電子移動度

また、電流が作る磁場は、直流 ( DC ) でも交流 ( AC ) でも同じ絶対値で発生する為、どちらも測定が可能です。直流も測定できるという点が、カレントトランス ( CT ) のような電磁誘導方式と異なる点です。

さらに、コア付電流センサーのように、磁気コアを必要としないため、ヒステリシス誤差も原理的に存在しません ( 図3 ) 。その為、零電流付近でも高精度に再現性良く、測定することが可能です。

図 3 コア付電流センサー構造図  ( オープンループ型 ) 図 3 コア付電流センサー構造図 ( オープンループ型 )

ここまで磁気センサーとしてホール素子を用いる場合を示しましたが、磁気抵抗素子 ( MR ) を使ったコアレス電流センサー IC も市場にはあります。ただ、 MR を磁気センサーとして使う場合、下記に示す多くの懸念点が存在する為、電流センサーには不向きと考えています。

懸念点:大電流印加後の不可逆な特性変化、零電流付近の直線性、磁気ヒステリシス、外乱磁場影響

特に、大電流により発生した磁場によって、MRの特性 ( 電流感度やオフセット ) が不可逆的に変化する現象、及び零電流付近でのバルクハウゼン効果 (*1) による直線性の劣化は、 MR の原理的な弱点です。結果として、ホール素子を用いた電流センサーと比べて過電流に弱く、精度も悪くなります。

*1 バルクハウゼン効果

磁場により磁壁が移動する際、不連続に磁壁が移動することで雑音が発生する現象。電流センサーの場合、特に弱い磁場となる零電流付近で雑音が発生し、直線性が劣化する。

4 . ASIC の役割

ASIC は、磁気センサー信号の増幅、電流感度の調整、零電流電圧の調整、各種温度補正を実施する機能を持っています。コアレス電流センサー IC はこの ASIC の働きにより、温度特性の小さい、使いやすい製品となっています。

また、コアレス電流センサー IC の場合、一次側の絶縁電源は不要です。この一次電源不要という点は、設計やレイアウトの観点から使いやすさにつながります。

5 . まとめ

上記の通りコアレス電流センサー IC は、 「 一次導体に電流を流し、発生する磁場をホール素子で電圧として取り出し、ASIC で増幅・補正して出力する 」 という非常にシンプルな原理で出来ております。

・発熱が小さい
・直流・交流の測定が可能
・磁気ヒステリシスが無い
・一次側絶縁電源が不要

といった多くのメリットがあるコアレス電流センサー IC ですが、

・分解能が低い
・応答速度が遅い

といったデメリットも内在しています。
このデメリットを解消した電流センサーが、AKM のコアレス電流センサー IC の "Currentier" です。

関連情報

AKM のコアレス電流センサー IC ”Currentier" の情報は、下記をご覧ください。

AKM のコアレス電流センサー IC "Currentier"

小型パッケージおよび低発熱による機器の小型化

幅広い電流測定範囲による基板共通化と低発熱による熱設計の簡素化

絶縁距離の確保と過電流検知機能

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